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カテゴリ:店主の趣味( 2 )

川勝さんのいた時代~Requiem pour Le pop-addict

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バブルは弾けていたものの、
好景気の余韻がまだ街に残っていた90年代初頭。
ちまたではトレンディドラマが人気を博し、
女子大生は皆、ドリカムの唄のような
バラ色の「未来予想図」を思い描いていた…。

が、そんな「いかにも」な人生なんてツマナライ!と
アニエスb.のボーダーシャツに反骨精神を込め、
渋谷のWAVEやHMVといったCDショップにライヴハウス、
そして単館系の映画館をテリトリーにしていた文化系女子の私にとって、
川勝正幸さんはつねにオルタナティブで刺激的な
ポップカルチャーの道先案内人でした。

コーネリアスや小沢健二、スチャダラパーといった
キラ星のような渋谷系アーティストを、先輩風吹かすことなく、
対等な立場でバックアップ/レコメンドしていたのも敬服すべきことですが、
個人的に一番印象深く、もっとも影響を受けたと思うのは
一級のアメリカかぶれとしての、セルジュ・ゲンズブール再解釈です。

ともすれば、シャンソンや、ワールドミュージックといった
矮小されたジャンル枠に収められがちな彼の作品を、
ポップスやロック、ブラックミュージックの影響下にある音としてきちんと評価し、
「ビートのプレイボーイ」という、いかした称号まで与えた川勝さん。

その尽力によって、ゲンズブールの繊細かつパンクな魅力を知り、
詞を暗記してしまうほど、デカダンな唄の世界にのめりこみました。
ゲンズブールの墓参りをしたい、サンジェルマンの家を訪ねたい、
そして彼が生きた街に住みたい!と、パリ留学も決行。
おかげで一年大学を留年することにはなりましたが…

その後、ゲンズブールが監督した作品、
ジェーンとゲンズブール共演の映画も次々公開されるようになり、
私たち世代のフレンチマニアックは
みな夢中になって映画館に駆けつけたものです。

* *

ほかの方もよく言われていることですが、
川勝さんほど、ライヴやコンサート会場で
出くわす回数の多かった業界の方はいません。
私はブライアン・ウィルソン復帰後間もない来日公演の時と、
ジョアン・ジルベルトの2度目の来日の時はすぐ近くの席におり、
「氏はこのコンサートをどう観てるんだろうか…」と
つい意識してしまったのを、記憶しています。

川勝さんと共有したあの時代、至福のライヴ空間も含めて、
すべてが不可逆な「時間」というものの儚さを、感じずにはいられません。

(画像はゲンズブールのRemix版、Jane Birkin
Je t'aime moi non plusのシングル。私物です)
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by hongomitte | 2012-02-24 23:52 | 店主の趣味

映画「マザーウォーター」観ました。

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大好きな映画「かもめ食堂」「めがね」を手掛けたプロジェクトの
新作公開と聞いて見に行って来ました。

年のせいなのか、前評判を知っていたからなのか。
これといった事件も起きず、淡々と過ぎ行くストーリー展開にも退屈さは感じず。
むしろ、観ている間、ずっとこの心地よい空間にいたいとさえ感じました。

ロケ地が京都であるにも関わらず、寺町的な光景は登場しません。
どちらかというと、日本国内のどこかにある川沿いの町という、
アノニマスな雰囲気になっていると思います。

そんな川のある「町」に、それぞれ他のどこかからやって来て、
バーやカフェ経営、とうふ屋などを生業にして暮らしている住民たち。

その暮らしぶりは、ほんの一端しか映画で描かれていませんが、
各人の佇まいやお店の内装などからして、かなりコンパクトでシンプルな生活を
送っているように感じられます。

例えば、セツコ(小林聡美)が営むウイスキーしか出さないバーの、
カウンター席だけのミニマルな空間。
古い民家をリノベーションした砂壁風の内装には、
「和」独特のストイックさが漂っている気がして、
そこでヤマノハ(加瀬亮)と交わされる禅問答的な会話も含め、
思わず、ここはお寺?と錯覚してしまう程でした(笑)。

あまりネタバレしてしまうとつまらないので、この辺にしておきますが、
京都のはんなりとしたスローな空気感は隠し味的にベースにありますし、
癒しムービーとしての側面だけではなく、タイムリーな社会的トピック、
例えば、働き方の問題や少子高齢化、単身者同士の共生なども
描かれているんじゃないかと思ったり…。

余白が多い分、見終わった後にじわじわ来る映画です。

マザーウォーター
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by hongomitte | 2010-11-02 01:01 | 店主の趣味